熊本地方裁判所 昭和25年(ワ)310号 判決
原告 青木竹蔵
被告 南部殖産株式会社
一、主 文
被告は原告に対し金一万四千円及びこれに対する昭和二十五年六月三日以降完済迄年六分の割合による金員を支拂へ。
原告その余の請求はこれを棄却する。
訴訟費用は被告の負担とする。
二、事 実
原告は「被告は原告に対し金一万四千円及びこれに対する昭和二十五年三月八日以降完済迄年六分の割合による金員を支拂へ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として「被告は昭和二十五年二月六日原告に宛て手形金額金一万四千円、支拂期日同年三月七日、振出地熊本市、支拂地同市、支拂場所同市西岸寺町十五番地なる約束手形一通を振出し、原告はその所持人となつたので右支拂期日に支拂場所に於て該手形を呈示して支拂を求めたが拒絶せられたので、右手形金及びこれに対する支拂期日の翌日以降完済迄年六分の法定利息の支拂を求むるため本訴請求に及んだ旨陳述し、被告の抗弁を否認し本件手形の振出人の署名として会社代表者の氏名の記載はないが被告会社名下に同会社々長印の押捺があるので被告の抗弁は理由がない。」と述べた。<立証省略>
被告は最初になすべき口頭弁論期日に出頭しないので、その提出した答弁書はこれを陳述したものと看做した。右答弁書によれば「原告の請求はこれを棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め「原告主張事実中被告より原告に宛てた原告主張の如き約束手形一通の振出されたことはこれを認めるが、その他はこれを否認する。右手形は振出人の署名としては單に南部殖産株式会社と記載してあるのみで代表取締役津川勇の記名捺印を欠いてゐるので手形の有効要件たる絶対的記載事項としての振出人の署名を欠き無効のものである。よつて原告の本訴請求は失当である。」と謂ふにある。
三、理 由
昭和二十五年二月六日被告より原告宛の手形金一万四千円、支拂期日同年三月七日、振出地熊本市、支拂地同市、支拂場所同市西岸寺町十五番地なる約束手形一通が振出された事実は当事者間に爭がない。然るに被告は右約束手形は適法な振出人の署名を欠く旨抗爭するのでこの点につき按ずれば、右当事者間に爭のない事実により眞正の成立を認め得る甲第一号証によれば右約束手形の振出人として被告会社名たる南部殖産株式会社の記名の下に右会社々長の印影の押捺せられてゐる事実を認めることができるのであつて、斯る場合代表者が自己の署名又は記名捺印をなすことを要する旨の異論がないではないが、右法人の記名とその代表者の捺印がある以上、法人の代表者が法人のために手形振出人として署名した趣旨が看取できるのでこれを以て法人の署名の方法として違法と認むべき何等の理由がなく被告の抗弁は採用できない。而して原告が右支拂期日に支拂場所に於て手形の呈示をなして支拂を求めた事実を認むべき何等の証拠がないのでこれを認めることができない。果して然りとすれば原告の本訴請求中右手形金額及びこれに対する本件訴状(支拂命令)送達の翌日であること記録上当裁判所に顕著である昭和二十五年六月三日以降完済迄年六分の法定利息の支拂を求める部分は正当であるが、その余(支拂期日の翌日より訴状送達の日迄の法定利息を求むる部分)は失当であるからこれを棄却し、民事訴訟法第八十九條、第九十二條を適用し主文の如く判決する。
(裁判官 池畑祐治)